農地に関する許可申請
農地を売買したい時や農地を転用(農地以外のものに)するためには,農地法の許可が必要となります。
弊所では,関連する諸手続き(非農地証明・農業振興地域(農用地区域)からの除外・土地改良区、都市計画法、宅地造成規制法など関連する協議)を合わせて扱わせていただきます。 また,農地の売買に関するアドバイスや農地売買契約書類作成もいたします。
相談①
農地の権利移動について,農地法3条の許可を受けなければならないのはどのような場合でしょうか? また,その手続きはどのように行えばよいのですか?
①農地法3条1項の許可について
- 農地または採草放牧地(以下「農地等」といいます)についてこれを転用する目的以外で所有権を移転し,又は地上権,永小作権,質権,使用貸借による権利を設定し,もしくは移転する場合等,その農地等の耕作者が変更する場合に必要となります。
- 相続や特定遺贈など,相続人が被相続人の地位を包括的に承継するものについては許可を受ける必要はありません。
- 許可を受けずにこれらの行為をした場合は,その効力が生じないばかりか3年以下の懲役又は300万円以下の罰金という刑罰が科されます。
②農地法3条の許可申請手続きについて
・許可申請は,所定の事項を記載した申請書に,その農地等について権利移動をしようとする当事者が連署して行うものです。
許可申請書は,農業委員会に提出します。
相談②
相続により農地の権利を取得した場合,農業委員会への届出が必要なのでしょうか?
①農業委員会が把握することができない相続等の権利移転があった場合には,権利の移転から10か月以内に届け出ることが必要です。
相談③
農業委員会の許可を受け,10年の約束で農地を賃貸していましたが,もうすぐ10年になるので返してもらい子供の家を建てたいと思っています。 この場合,貸している農地を返してもらうにはどうすればよいでしょうか?
①期間の定めのある農地等の賃貸借については,期間満了の1年前から6か月前までの間に更新拒絶の通知をしなければなりません。 また,更新拒絶の通知をする場合には,原則として県知事の許可を受ける必要があります。 ただし,10年以上の期間の定めのある賃貸借の場合には,この許可を受けることなく更新拒絶の通知ができることとされています。 質問の場合,知事の許可を受けることなく所定の期間内に更新拒絶の通知をすることによって貸付地の返還を求めることができます。
相談③
農地法4条では農地の転用について,どのような規制をしているのでしょうか?
①農地を転用するとは,農地を宅地等の農地以外の土地にすることです。 具体的には農地に変更を加えて住宅や工場,公園等の施設の用地にする行為などです。 また,農地の区画や形質に変更を加えなくても,例えば農地をそのまま資材置き場として利用するなど,耕作目的以外に供され農地として利用できない状態にする場合は,転用行為に該当します。 農地法では,このような農地を農地以外のものにする行為を行う場合,都道府県知事の許可が必要となります。
②農業用施設の用地にする場合について農地転用に当たるかどうかの基準(概略)
〇農地転用に該当する場合
・農業用施設の敷地をコンクリート等で地固めする場合
・発泡スチロール等を敷地に埋設して土地と区分された状態で水耕栽培などを行うような場合など
〇農地転用に該当しない場合
・温室等を建築した場合でも,その敷地を直接耕作の目的に利用し,農作物を栽培している場合
・農地の形質変更を行わずに,鉢・ビニールポット栽培を行う場合など
相談④
農地法4条6項各号に規定する農地転用の不許可事由に該当することとなる「政令で定める相当の事由」とはどんなものでしょうか?
①農地転用の不許可事由(抜粋)
〇次に掲げる農地を農地以外のものにする場合
・農用地区域にある農地
・農用地区域外にある農地であっても良好な営農条件を備えている農地として,土地改良法に規定する土地改良事業などで農業用用排水施設の新設又は変更,区画整理,農地の造成その他特定土地改良事業等の施行に係る区域内にある農地
相談⑤
農地法5条の規制とはどのようなものでしょうか?
①農地法5条は,農地等について転用を目的として権利の設定又は移転を行うことを規制していて,農地等について売買などを行う当事者は,都道府県知事の許可を受けなければなりません。
〇規制の対象
・農地法5条の対象となるのは,農地等を農地以外のものにする目的で所有権,賃借権等の権利の設定又は移転をするという法律行為を行う場合です。
〇農地等を農地以外のものにする行為とは
・農地法4条と同じで,農地を耕作の目的に供される以外の土地にする行為で,具体的には農地に区画形質の変更を加え,住宅用地や工場用地など他用途に転換する行為です。この場合,農地自体の区画形質の変更を加えないまま,例えば資材置き場にする場合であっても耕作の目的に供さない場合は,農地を農地以外のものにする行為となります。
〇許可の効力
・農地法5条の許可を受けないで行った農地等の権利の設定又は移転は,その効力を生じないとされています。
〇規制の例外(抜粋)
・市街化区域内の農地については,あらかじめ農業委員会に所定の事項の届出を行えば許可は要しないこととされています。
相談⑥
自分の農地を転用する場合に転用許可を要しないのはどのような場合でしょうか?
①農家が自己の所有する農地について,自ら耕作している他の農地の保全若しくは利用の増進を図るために転用する場合又は2アール未満の農地をその者の農作物の育成若しくは養畜の事業のための農業用施設として転用する場合については,許可を要しません。
〇農業用施設への転用
・区分 ・対象となる施設(例示)
自らの耕作に供する他の農地の保全若しくは利用の増進のために転用する場合 農道,農業用用排水路,ため池,防風林
2アール未満の農地をその者の農作物の育成若しくは養畜の事業のための農業 畜舎,温室,堆肥舎,農機具収納施設,農業用倉庫
用施設として転用する場合
相談⑦
農地に太陽光発電設備等再生可能エネルギー発電設備を設置する場合の農地転用許可制度の取り扱いについて教えてください。
①農地に再生可能エネルギー発電設備を設置する場合には,転用許可が必要です。
〇農地に再生可能エネルギー発電設備を設置する場合
・農地に再生可能エネルギー発電設備を設置する場合には,転用許可が必要となり,当該許可の可否は,住宅や工場等その他の施設への転用の場合と同様,農地法に定める農地転用基準に照らして判断されます。
〇農地の法面又は畦畔に太陽光発電設備を設置する場合
・農地の法面又は畦畔(以下「法面等」といいます)は,作付けを行う田面又は畑面(以下「本地」といいます)の機能の維持及び管理にとって必要なものであるため,本地と一体的に農地として取り扱われています。
このため法面等に太陽光発電設備を設置する場合には,農地法4条1項又は5条1項の許可が必要となります。
相談⑧
一筆の農地の一部を転用したいのですが,分筆しないと許可申請はできないのでしょうか?
①農地の一筆の内の一部を転用する場合には,農地転用の許可申請に当たって,一筆の内のどの部分を転用するのかを特定する必要があります。
具体的には,転用部分の場所,面積が特定できる実測図等を申請書に添付することになります。
ただし,一筆の内の一部の転用に伴い所有権を移転する場合には,分筆前に転用の許可を受けても,その許可をもって所有権移転登記ができません,したがって所有権を移転する前に転用する部分をあらかじめ分筆した後に,許可申請を行う必要があります。
相談⑨
市街化調整区域内の農地は転用が難しいと聞きましたが,どのようになっているのでしょうか?
①市街化調整区域は,都市計画法において「市街化を抑制すべき区域」とされていてこの区域内における開発行為や建築行為はこの法律で厳しく制限されているからです。 このような市街化調整区域内では農業上の土地利用を積極的に行う必要があるため,この区域内の農地は農業振興地域の整備に関する法律で「農用地区域」が設定されている場合が多く,この場合農地の転用は原則許可されません。
〇市街化調整区域における規制
・都市計画法において市街化調整区域は「市街化を抑制すべき区域」とされていて,市街化区域と市街化調整区域の区分を担保するために,開発許可制度が設けられていて市街化調整区域内では農家住宅や農業用施設など一定の施設を建築するための転用(開発行為)しか認められません。
〇市街化調整区域と農用地区域との関係
・農業的土地利用を図ることが適当とされている「農用地区域」は市街化を抑制する区域である市街化調整区域の中に存在します。 一方,農用地区域は都道府県知事が指定する農業振興地域の中に設定されますが,この場合は市街化調整区域及び都市計画区域外にも存在することになります。
〇転用許可基準
・農地の転用許可基準では,農地の利用確保上の度合いに応じて,「農用地区域内の農地」「第1種農地」「第2種農地」「第3種農地」に区分され,この区分ごとに許可方針が示されています。
・開発許可との関係では,農地の転用許可はその確実性を確保するため,開発許可等転用許可以外に許認可を要するものがある場合にはその見込みがなければ許可はできないことになっています。 このため市街化調整区域において農地転用(開発行為)を行う場合には,都市計画法の開発許可が見込まれるものか,開発許可を要しないものである必要があります。
相談⑩
相続登記が済んでいない農地でも転用許可申請は可能でしょうか?
①農地の登記名義人が死亡していて,相続登記がなされていない場合でも申請者が真の所有者であり相続人であることが確認できれば,農地転用の許可申請をすることができます。ただし,農地法5条の許可を受けて当事者が所有権移転を行う場合には,相続登記を済ませておく必要があります。